カムイ・コタン
北海道旭川市神居町神居古潭
■巨岩を信仰したアイヌ民族の聖地
カムイ・コタン(神居古潭)は、石狩川が川上
盆地から石狩平野に流れ出る渓谷に位置する。川
幅が急に狭くなり、下流に向かって大きく蛇行す
るところで、両岸には緑色をした巨岩がつらなる。
説明板には、「山が迫り、川幅が急に狭まるこの
地は、川は渦巻く激流となり、多くの舟が激流に
のまれたため、魔神が住むと怖れられた」と記さ
れている。
ただ伝説とは裏腹に、「神居古潭変成岩帯」と
よばれる 緑泥片岩のつらなりは、まさに「神の
居処」とよばれてきたアイヌの聖地を想わせ、お
よそ魔神とはほど遠い光景を見せている。
南北にのびる「変成岩帯」は、太古、北海道が
形成されたとき、北海道の西半分と東半分がここ
で衝突し、つながったことをしめすものだという。
いわば、神が創造した造形美そのものといえるが、
石狩川と緑色をした岩石のつらなりが、「神の居
処」を連想させたにちがいない。
(『磐座百選』より一部抜粋)
忍路環状列石
北海道小樽市忍路2丁目
■列石が語るアイヌの精神世界
めざす聖地は「忍路環状列石」とよばれている。
環状に石を並べた遺跡のことで「ストーンサーク
ル」とよばれることが多い。北海道と東北に多く
見られる遺跡で、東北から始まり、北海道に伝わ
ったとされている。
忍路の列石は、150年ほど前に発見されたも
ので、3500年前の「縄文後期の遺跡」とされ、
わが国最大規模のものだという。南北33メートル、
東西22メートルの楕円形とあり、日常の生
活空間と区別された墓地で、死者を弔う儀式も行
われたと記されている。
列石は、明治年間に、付近の人たちが持ち去り、
巨石の大半を失ってしまったという。それでも、
地上1メートル以上のものだけでも40個に達し、
50センチ以上1メートル未満の石は約100個現存
しているという。原初の規模が残っていればどれ
だけ壮大なものだったかと悔やまれる。
(『磐座百選』より一部抜粋】)